第二章 結婚の条件

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「テレビゲームや塾通いばかりで、地域で遊ぶ子供の姿が減ったのは、本当は重大な問題です。子供は遊びから生きるルールを学び、社交性を身に付け、自分と違った人を認める訓練をし、人として成長するのです。同時に今が体を作る成長期の大切な時期です。車に乗せず歩かせてください。足は心臓です。小さい時に歩いて心臓を丈夫にしなければ、後では取り返しつきません。歩けば地域の人と顔見知りになり、関わりが生まれます。声を掛け易くなり、どこの誰かが分かります。今日の話の中で高学年のお母さんから、非行に走る心配が出されました。自分の子の親だけでなく地域の大人は全て子供達の共通の親です。地域の繋がりと温かい目が、関心と愛情を持って見守っていると気付けば、子供は悪くなりません。自分の子を良くするなら、よその子も我が子と思って声掛けする街づくりが大切です。子供は共通の宝です。親の責任も、先を生きる大人としての責任もあります。親同士も繋がりを持ち、会えば子供の話が安心して話せる地域づくりを期待します。その為の助言やお手伝いは喜んでいたします。」 「いい会でしたね。勉強になりました。もし宜しかったらこの後、続きをやりませんか。」 「いや、これから相模湖へ走って百本のペットボトルに水を汲む作業があり、明日の授業に間に合わせます。一日どれ位生活用水が必要か、相模湖の水がどれ位汚れているか。生徒の目で確かめ、実感を掴んで欲しいです。」 同僚の岩橋は自分には真似できない。という風に仰け反って肩をすぼめ、両手を広げた。 そこまでやったら身がもたないよ。とそっぽを向かれても、目立つ事されたらやり難いよ。と皮肉られても、一切耳を貸さずに貫徹する。大事なのは生徒にとって一番良い方法を模索し、進むと決めたら雑音は切り捨てる。教育は遣り出したら際限がない。どれだけ労力と時間をかけるかは個人の考え方次第で、はしょればはしょれる。しかし、完璧にやり遂げないと居心地が悪く、不安定になる性分は変えられない。仕事優先で理想を貫けば、どうしても妻と娘は二の次になり、妻の両親におんぶに抱っこで切り抜ける。甘えと無責任さは承知しているが、半分は頬被りして通す。半分は結婚の前提条件と居直って逃げている。
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