街中で

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あー…暇だ…… 俺は、ぼーっと辺りの景色を眺めながら歩いていた 高層ビル、オシャレな飲食店 日曜の昼下がりで賑わう景色を 俺はただただ、ぼーっと眺めていた 理由は簡単 暇だったからだ オープンカフェでたむろする女子大生達 楽しそうだなぁ~ スーツ姿の青年が 電話しながら高層ビルから出て来る 忙しそうだなぁ~ やりたい事はあったけど 上手くいかないのが人生 なんの取り柄もない、現在26歳フリーター そして、夢も希望も金も無い でも、時間だけは無駄にある生活 あー…暇だ…… そんな俺は、きらびやかな表通りを抜け 落ち着いた路地裏を進んでいた 路地裏を進んでると 前方に、自転車を漕ぐ主婦の姿が見えた 安売りだったのか、何人家族だ?と思わせる程の大荷物で、フラフラと自転車を漕いでいる そこへ突然、脇の細い路地からソフトクリームを持った少年が飛び出して来た 辺りに響くブレーキ音 あわや大惨事??と、なりかけたが ギリギリの所で自転車が停車し、大事には至らなかった 買い物帰りの主婦は怒号を上げる 「いきなり飛び出したら危ないじゃないっ!!……ぶつかったらどうすんのっ!!」 主婦の怒号に、少年はただただ立ち尽くしていた 目に薄っすらと涙を溜めながら しばらく、怒号を撒き散らした主婦は またフラフラと自転車を漕ぎ、その場を後にした 1人残された少年 ふと少年が足元に目をやると そこには、ソフトクリームの無残な姿が すると、我慢していた涙が 1つ、また1つと溢れ出て来る 少年は天を仰ぎながら、大声で泣き叫んでいた 一連の状況を見ていた俺は そっと胸ポケットからスマホを取り出した 画面を見ると、カメラの動画撮影の状態で 映像が録画されている 撮影時間はなんと1時間弱 俺は録画を停止し、撮影していた映像を見返した ひとこと言っておくが 俺は盗撮魔でも、変態でも無い これには理由があった
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