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「つきあいでお酒を飲んだり、なにかつまむこともあるし」 「あぁ、そうか、それならいま食わなくてもいいな」  庸介は納得したらしい。 「いただきます」と言いあってから、ふたりでハンバーガーへと貪りつく。  咀嚼して飲みこんでから、綾世はうち明けた。 「でも最近は、新しく作るお店の内装を決めたり、提供するメニューを試行錯誤したりしているから、多少は慌ただしく動いてるかな」 「新店……そういえば、こないだVIPルームでそんな話をしていた」 「ホストになれなかった人たちのお店でもあるんだよ」  微笑む綾世に、庸介は首を傾げる。 「どういうことだ」 「水商売に向いてないなぁって人、ちらほらいるんだよね……しかたないんだけれど。辞めていく従業員の姿見てたら、この人たちが働けるお店も作りたいなぁって考えるようになって――、それでカフェを作ることに決めたんだ」  綾世は頭のなかに描いているビジョンを庸介に伝える。  新宿にオープンさせることもあって、深夜まで営業しようとは思うが、あくまでもカフェだ。  ちょっとしたスイーツといっしょに美味しいコーヒーを提供したい。  にぎやかで派手な空間というより、しっとり落ち着く雰囲気にしたい。     
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