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 ベンツは大通りからすこし入ったところで、路肩に停車した。運転手はスマートフォンを出し、電話をする。  短いやりとりをして通話はすぐに終えられたが、彼はバックミラー越しに庸介をちらと見る。  申しわけなさそうな目をしているのが、サングラスをかけていても透けて伝わった。 「まだ話が終わらないそうで、若頭が、庸介さんも来るように言ってます」  断れば面倒臭いことになるから、庸介はスクールバッグを掴む。 「どこに?」 「ホストクラブに……」  店名を聞いてベンツを降りる。スポーツバッグは置いてきた。  目の前の雑居ビルに入っていくと高校生には不釣りあいな場所だから、エントランスにたむろするホストらしき者たちや、通りかかる人々に怪訝な目をされる。  庸介は無視してすり抜けていった。  スニーカーの足音を細長い通路に響かせ、奥まったエレベーターホールに向かう。  左右の壁には入居している店の看板がずらりと並んでおり、いくつかのホストクラブやメンズキャバクラのほかに、小料理屋、オカマバー、スナックなどの店名が色鮮やかでけばけばしい。  目的の店は最上階にあった。エレベーターに乗ってボタンを押す。  密閉された空間の煙草臭さに顔をしかめる庸介だったが、こんな匂いにも慣れている。     
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