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 つまみはなく、森伊蔵と水割りだけが置かれたテーブルをはさみ、この店のオーナーと柾貴が座っていた。庸介に振り向いたオーナーは、二十代半ばといったところだろうか。  庸介と眼があうと柔和に微笑んでくれる。 (イケメンだな……)  彼に対し、庸介はそんな印象を抱いた。  柾貴は大柄で百八十を越える背丈を持つが、こうして見る感じではオーナーは柾貴よりかすかに低いくらいで、じゅうぶんに長身の域に入る。  スタイルの良さに加え、目鼻立ちのハッキリした華やかな顔の造作をしているから、流行の若手俳優やモデルのようだ。  白いワイシャツにスラックス、革靴というシンプルな装いをしているのがまた、容姿の麗しさを引き立ててやまない。  いっぽうの柾貴もスーツ姿だが、漆黒のシャツをあわせ、高価なネックレスやバックルを誇示するかのように見せつけていた。袖からはロレックスが覗く。明るく脱色した短髪。  柾貴はいつだって無駄にぎらぎらしている。  獰猛な肉食獣のような男と、見るからに女性受けするルックスをした貴公子のような男の組み合わせは──まさに対比だ。  どっかりと大股を開いて座る柾貴は、横柄さの溢れるそぶりでソファの座面を叩く。 「おう、庸介、よく来たな。まぁここ座れや」  言われるがまま隣に腰を下ろすと、そのまま腕は庸介の肩にまわされた。  庸介の表情はより不機嫌なものになってしまう。     
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