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「ところでさ、転校生君」
話題を変えたいのが手に取るようにわかる表情を矢田君が浮かべたので、俺もそれに乗っかるようにうなずいた。
「山田だろ。さっき名乗ったんだからそう呼んでやれよ」
「今は良いんだよ。山田君が転校生だからできる質問を今からするんだから」
唐揚げを口に運びお茶で流し込む小山君の忠告を、手で払いのけるようにして流した矢田君が妙ににやけた顔をこちらに近づけてくる。
「で、何?」
俺の問いに矢田君は周りを見渡して、小声でつぶやいた。
「うちのクラスさ。正直どう思う?」
「クラス?まあ…みんないいやつそうだけど」
矢田君がまるで珍しい生き物でも見るかのような目でこちらを見る。
「そういうことじゃねぇよ。俺が聞いてるのは、女子のレベルだよ」
ああ、そういうことか、とパックのお茶のストローに口をつける。
すると、俺の右隣からフッと溜息が漏れる音が聞こえた。小山君が呆れた顔で矢田君の方を見ていた。
「またくだらねぇこと言ってんのか、お前は」
「いや、だって気になるじゃん。山田って都会から引っ越してきたんだろ。その都会っ子から見てうちのクラスの女子がどれくらいのレベルなのか意見を聞きたいじゃねぇか」
「くだらねぇ。おい山田。別に答えなくていいぞ?」
その鋭い眼光が今度はこちらに向けられる。まるで俺が何か悪いことをしたかのような錯覚に陥り若干冷や汗がにじみ出たが、敵意は感じられない。きっと元からこういう顔なんだろう。
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