私は伝説のユーチューバ―

2/3
前へ
/3ページ
次へ
 私は伝説のユーチューバ―と言われるミウラナポリタンだ。  私はユーチューバ―として生計を立てている。そこいらのサラリーマンの年収などをはるかに凌いでいる。それは私が体を張って、命がけで数々の動画を撮影し、伝説のユーチューバ―としての地位を築き上げたからである。  少なくとも八回は死にかけたし、十五回は警察に逮捕されかけた。  あなたも一度くらいは私の動画を見かけたことがあるはずだ。  たとえば、ミウラナポリタンの代表作である〈クジラの丸のみ〉はどうだろうか?    私は酸素ボンベを担いで海の中にいる。手には水中カメラを持っている。海は青く綺麗だ。  クジラを見つける。大きなクジラだ。クジラは食事中で私になど気にも留めない。私はクジラに近寄っていく。  大口を開けてプランクトンやオキアミを食べているマッコウクジラの口に突進して、私はそのままクジラの口の中にダイブする。  私はクジラに飲み込まれてしまう。  私は暗闇に引きずり込まれる。でも意地でもカメラは手放さずに録画を続ける。  どれだけの時間が経過したのだろうか。  本当に死んだかと思ったけれど、何とか私はクジラのお尻から排泄される。  暗いクジラのお腹の中から明るい海の中に飛び出した瞬間、私は生まれ変わったような気がした。  神の恩寵が私に降り注ぐ。  この〈クジラの丸のみ〉動画はダスティン・ビーバーも気に入ってくれている。  まだ見たことがない人はぜひユーチューブで見てほしい。 〈クジラの丸のみ〉動画を見たことがない人でも、この動画はどうだろう。 〈スズメバチクラッシュ〉、これも私の代表作のひとつだ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加