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「海には塩が入っているではないですか。ここは川です!溺れます!死にます!」
「風呂だと思え!」
志摩がパニックになっているので、仕方なく岸まで抱えて泳ぐ。
「志摩、箪笥は木で、浮くようになっている」
「違います!箪笥は泳げないのです……」
必死で川岸に志摩を上げると、川から追うように黒い影がついてきた。
「え、一緒に飛び込んだの?」
そこに立っていたのは、柴崎 翔琉(しばさき かける)であった。
「守人様、見つけた。すごい、本物はかなり可愛いですね」
逃げられると思っていた、俺の方が甘かったらしい。
「あ、手も小さい。それに柔らかくて、いい匂いがする……」
いい匂いはしないだろう。川には入ったが風呂には暫く入っていない。
「目が金色で、目に光のリンクを持っているのか……宝石みたいだ」
翔琉は、俺の手や顔を手にとっては観察していた。
翔琉は、俺を死に追い込んだ柴崎一族の者であったが、志摩と引き換えに、光二を探すと申し出ていた。でも、俺は光二も、志摩も大切で、どちらかを選ぶということはできない。光二は、自分で探そうと思っていた。
暗闇では周囲が分からないが、ここは河川敷であろう。
「志摩、焚き木を集めて」
「はい」
流木を集めると、火を付けてみた。すると、周囲が見えてくる。
「ここは、どこだ?」
周囲が見えてはきたが、森しかなかった。
「温かい。服を乾かしてから移動しましょう」
志摩の箪笥も乾かさないと、痛んでしまう。俺が箪笥を火に当てていると、翔琉は俺の服を脱がそうとしていた。
「……自分の服を脱いでよ。俺は自分でするから」
「ええ、俺はもう干しましたよ。あとは、守人様でしょ」
この翔琉は、無限の闇産みという能力を持っていて、かなり凶悪な存在であった。しかし、ただ接していると、どこか明るい。
執拗に翔琉が俺の服を脱がして、肌に触れようとしてくるので、志摩が手を出して俺を掴んだ。志摩は、人を容易に掴める、巨大な手を持っている。
「志摩、温かい……」
志摩の手の中は、俺の最高の寝床であった。
「あれ、志摩さん、小指に怪我していますよ」
志摩は、俺を助けるために、小指を刀で切り落とされていた。俺は、慌てて志摩の手から出ようとしたが、志摩は握ったままであった。
「あ、これは酷い怪我だよね……痛いよな」
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