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志摩が怪我をすると、泣きたい気分になる。俺は、志摩の指をこじ開けて、小指を見ようとした。
「……やっぱり、守人様は綺麗だ。体に光の文様が入って、周囲を照らしている」
でもと、翔琉に志摩の手の中に押し戻されてしまった。
「闇だけの村に、この光は酷だよ。もう少し隠れていて……」
翔琉は、闇を集めると志摩の指を再生していた。
「×の怪我ならば、俺でも治せるから」
俺は指の隙間から、覗いてみた。すると、笑っている翔琉と目が合った。
「志摩さんにも、危害を加えないよ。俺も、満千留(みちる)がいなければ処刑されていた身分だしね……守人様が、追われている状況も理解している」
無限の闇産みは、禁忌の存在で処刑対象であった。しかし、柴崎に満千留という光を食べる子供が生まれ、翔琉は二重人体として生かされる事になった。
×は光に消されてしまう。光を食べる満千留は、人と判断され、異能持ちであったので、守人様という村を守る存在だと位置付けられた。守人様は、その時代に一人しか存在しないとされていたので、先に守人様と呼ばれていた俺は、皆を騙したと処刑される事になった。そこで、志摩が俺を食べ、逃走してくれたのだ。
「あの、村はもう守人様を処刑しませんよ」
「上月でいいよ」
年も近そうなので、様付けで呼ばれたくない。
「村は守人様が欲しい。でも、正式に辞退する書類が提出されているので、手が出せなくなっている」
遺体でもいいので、村は守人様を探そうとしていた。しかし、そこで氷渡(すがわたり)が権利を主張し拒否したのだ。
「村が動かないので、住民達が怒り、光二さんを誘拐して氷渡を脅迫してきた」
どうして、光二が誘拐されたのかは分かってきた。でも、柴崎は氷渡と仲が悪いが、誘拐はしていないという。
「俺は×です。こんな危険な存在ですけど、守人様と契約したい」
闇の中で、村を全滅させると言っていた人物と、同一人物とは思えない。
「村を全滅させるのではなかったの?」
「それは、満千留がもう半数の×を食べていますから、もうすぐですけど……」
それを、あっさりと認める所が、かなりマズイ人物なのではないだろうか。
「×を喰い尽くしたら、満千留が腹を減らす。守人様の光が必要でしょう」
俺は食糧らしい。
「俺は、食事用ね……」
俺がため息をついていると、翔琉もため息をついた。
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