第一章 漂流記

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「うぐぐ、どう不味いのか分かりません。でも、苦いとか、辛いとかではなくて、石ころを食べたような感じ」  俺は、石ころなのか。 「他の物と一緒に食べてみたら?」  見かねた翔琉が、近くに生えていた、きのこを俺に持たせた。 「きのこ。きのこです!これは、きのこ」  そう志摩は唱えて、やっと俺を飲み込んだ。  柔らかい空間を抜けて、無重力のような広い空間に行く。そこには、出ていなかった慧一が、外を観察していた。  翔琉は、俺が飲み込まれたのを確認すると、封印の布を探し出し、丁寧に箪笥を包んでいた。 「上月、暫く我慢していて。部屋に到着したら、必ず出すから」  この翔琉をどこまで信じていいものか、全く分からない。 「慧一、翔琉を信用してもいいでしょうか?」  慧一は、翔琉を観察していた。 「まだ、分からない」  志摩に飲み込まれていても、外の様子は見る事ができる。翔琉は、箪笥を背負うと、暗闇の森の中を歩いていた。  暗闇でも、翔琉は見えているのか、足取りに迷いはない。  しかし、十分程度で座り込んで休んでいた。しかも、三十分は休む。又、歩き出したが、再び十分で座り込んでいた。  これでは、森から抜けるまでに、一か月はかかる計算になる。 「箸より重い物を持った事がない?」  翔琉も育ちがいいので、重労働には向かないのかもしれない。 「恐るべし、体力だよね」  俺は光二を助けに行きたいので、やや焦りが怒りに変わりそうであった。 「翔琉!出して、俺が箪笥を運ぶ!」 「すいません。こんなに重いとは思いませんでした」  素直に翔琉は封印を外してくれたので、俺は転がるように外に出た。 「志摩、この体力なしを飲み込んでいて」 「はい!」  志摩は、翔琉は簡単に飲み込んでいた。しかし、中から慌てた慧一の声が聞こえてきた。 「志摩!消化するな!」  志摩は、翔琉を喰ってしまったらしい。 「志摩!翔琉を出して!」  そこで、吐き出された翔琉は、手が溶け掛かっていた。 「志摩……」 「すいません。かなり、美味しかったです」  味の問題ではないが、俺は不味いので少し悔しい。 「翔琉?大丈夫か?」 「まあ、すぐに治せます」  手は、闇が修復していた。  翔琉は、志摩の中に入れて運べない事が分かったので、一緒に歩く事にする。  闇に沈んでいる森は、足元にも何かが生えていた。よく見えないが、動く植物などもある。 「翔琉!転ぶな!喰われるな」
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