第八章 愛は闇よりももっと 三

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 扉を開いてみると、中は埃と黴に満ちていた。壁にスイッチがあり、入れてみると電気がついた。しかし、電気が付いたのはいいが、床に散らばる空の瓶に躓きそうになってしまった。  ここには、長い時間、誰も来なかったような気がする。上の建物からは、地下への入り口など分からなかった。ブランコもかなり重かったので、簡単には移動できなかったであろう。  積もっている埃の量も、まるで毛布か絨毯のようになっていた。 「…………」  壁に何か置いてあるが、それが手足のある人型なのが気になる。埃をどかす前に、誰か呼んだ方がいいのかもしれない。でも気になって、顔の部分だけ、ハンカチで叩いてみた。すると、頭の部分が床に落ち、転がって行った。 「取れた……」  志摩の手が頭を追い掛け、何事も無かったように体の上に乗せていた。  転がったので埃が落ち、見えてきたのは頭蓋骨であった。 「死体だね」  散らばる瓶、ボサボサの頭、伸びた髭?ミイラのようになり、毛は残っている。外傷は分からないが、皮膚が残り、骨に張り付いたようになっていた。地下のため、温度は低く、保存状態はいいのかもしれない。  俺は廊下に出ると、家への階段を探してみた。
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