第八章 愛は闇よりももっと 三

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「ここにあった……」  小さいが階段があり、登ってゆくと扉があった。でも、扉には鍵が掛けられているようで、開く事ができない。 「志摩、開けて」 「はい!守人さん」  志摩が鍵穴に指を入れ、鍵を開けてくれた。しかし、今度は金具が錆びていて、開きそうにもない。  思いっ切り扉を蹴ると、少し隙間が見えた。 「あ、開いた」  そのまま足で蹴り扉を開くと、氷渡と八重樫が、俺を凝視していた。 「壁から出てきた?」  否、食器棚が動き、その後ろから出ていた。 「ここに地下室がある。ついでに言うと、死体もあった」  氷渡が、あからさまに溜息をついた。 「上月、どうして、そうイタズラなの?地下室?」  俺はかなり真面目に生きていた。イタズラなどとは、心外であった。 「あ、本当に地下室だ」  どうも、改装した時に、扉の前に食器棚を置いてしまい、そのままになったようだ。リビングに巨大なテレビがあり、その下の床に、薄っすらと食器棚が置いてあった跡もあった。テレビの為に、部屋の内装を変えたのだろう。 「階段か……」  氷渡と、八重樫は真面目な話をしていたようだが、中断して地下に行っていた。そして、ワインの貯蔵庫で死体を発見した。 「餓死みたいだね。ここから出られなくなったのか」  八重樫が医者のような見解をしていた。しかし、どう見てもミイラであるのに、最初に脈を確認するのが八重樫らしい。これで、脈があったら、別の意味でホラーであった。 「警察を呼ぶか……」  床の埃が飛ぶと、そこには爪で書いたような引っ掻き傷の文字があった。ここに至るまでの、日付と経緯などが書かれていた。  ここには、初夏に来ていて、ボイラーの調整を頼まれていた。そこで、ここの奥様に惚れて、通路を使って忍び込む事を思いついた。  しかし、そこで悪夢が起きた。この通路は、外側から鍵を掛けるタイプで、家の方に入る鍵が閉まっていたのだ。点検に来た時は、鍵があるなど気付いていなかった。  次に来た道を戻ろうとしたのが、今度はブランコが台風で倒れたようであった。扉は開かず、地下に閉じ込められた。ブランコを起こすだろうと気長に待っていたが、一向に直す気配が無かった。ワインを取りに来るだろうとも思っていたが、部屋の外は静まったままであった。
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