第一章 漂流記

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壱樹村(いつきむら)に、車で入ろうとすると、落ちる。 それは幾度か体験していたが、妙な現象であった。 ちゃんと続いている村に向かう道を走っていて、道路も前にあるというのに、 まるでエレベータで下がっているように、宙に浮いて落下する感じがするのだ。 「志摩、逃げるならば、今!」   志摩は形を持たない、×(ばつ)と呼ばれる村の住民であった。 村には二通りの人間がいて、普通の人と、×とに分かれている。 ×は、人よりも遺伝子が多く、人とは異なる能力を持っていた。 そして、×は自分にない遺伝子を食って得て、神に近い存在を目指す。  完全な遺伝子を得ると、×は原始に戻り、世界は創世に戻るとも言われている。
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