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「確かに……」
「ですから、私が須郷に小野田との密会写真を出させます。その写真があるとないとではスクープの価値がだいぶ変わるでしょう? その代わり、なるべく須郷のダメージが小さくなる方法を考えてください。小野田を悪者にするだけで、十分記事は面白くなりますよね?」
「情にほだされたわけですか? 私は1記者としては事実を伝えたいと考えていますが」
「なんとでもいってください。写真がない今唯一の決定的な証拠である音声は私が握っているんですよ」
「……わかりました。記事中ではなるべく須郷さんを擁護する形にしたいと思います。もちろん、出す前に太田さんには見せますよ」
悔しそうな様子の遠藤。しかし、内心ほっとしているはずだ。
私の指示通りの記事とより下世話に騒ぎ立てる記事2つを用意すれば私のチェックは意味をなさなくなるし、
編集部が勝手にやったと言ってしまえば、遠藤としても罪悪感は痛まない。
私は冷静さを取り戻し始めていた。遠藤に頼っても無駄である。
「ほかに手はないですかね?」
「特には……」
「わかりました」
電話を切った私は、リビングに戻る。
須郷はリビングで土気色の顔をしてうろうろしていた。
「大丈夫。何とかなると思うで。」
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