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腕を組んで、時計型のICレコーダーを須郷の口元に近づける.
「やっぱり外が多いな。やっぱあんま旅行とかはいかれへんし」
須郷は胡乱な目でそういった。こいつは昔から酒に弱い。
「まあ試合とか遠征のときは会えへんもんな。オフがチャンスか」
「まあそうやね。」
「次いつ会う?」
「来週のオフかなー。普通に飲みに行ってホテル泊まる」
「赤坂やっけ?」
「そうそう。あのあたり」
「うかつなことすんなよ。中学のときみたいに」
中学のときに他校の女と通学路のラブホテルに入ろうとするところをこいつは私に見つかったのだ。
「あーあれなー笑ったわ。笑ったけど名前が思い出せん。誰やっけ?」
「美代子ちゃんやろ。あの子が高校落ちたせいで別れることになってめっちゃ落ち込んでたやんけ」
「せやった。せやった」
情報はつかめた。あとは決定的瞬間を写真に収めるだけだ。
やはり、不思議と私に罪悪感はわかなかった。
須郷とは親友だとずっと思っていたが、実はそれは思い込みに過ぎなかったのかもしれない。
それが自分の人非なる人間性の証明のようで哀しいような気持ちも沸いたが、それはそれで心地よかった。
2019年7月12日
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