2019年7月7日

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この日曜日。私は須郷の家の前の駐車場にレンタカーを止め、後部座席で帽子を目深にかぶって待機していた。 「まだなんですかね。もうすぐ昼になりますけど」 出版社文芸冬夏のカメラマン兼記者、遠藤がいぶかしげにこちらに水を向けた。 「まだですね。もう出てくるとは思いますよ」 焦りを隠して私は言う。 先月のテープを携えて私は金主を通じて名刺を交換していた遠藤に声をかけた。 週刊誌『文芸冬夏』は昔からあるスクープ雑誌。不倫・汚職・熱愛など様々なニュースを暴露する「スクープ投下」は流行語大賞候補に上がるほどのインパクトを残した。 遠藤はその編集部に出入りするフリーライターである。 「ほんとに今日太田さんに来てもらう必要はなかったんですけどねえ。むしろ邪魔というか……」 言葉を扱う職業のくせに、物事をオブラートに包むということを知らない人間だ。 「確かに私は撮影において邪魔かもしれませんが、そういう条件でネタを貴社に持ち込んだんです。いやなら今から新風さんに持ち込んだっていいんですよ」 「いやいや、それは、ご勘弁を。お、出てきましたね。なっ」 家から須郷が出てきた、奇妙ないでたちで。 パーカーを前後ろ反対にかぶって目から下を隠し、サングラスをかけている。 だが、あの背丈はどう見ても須郷だ。 「あれが須郷さんですか?」     
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