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「太田さん、どういうことなんです」
遠藤の鼻息は荒い。
「遠藤さん、小野田がすべて世間にばらすそうです。」
「え、それは……急展開ですね」
遠藤の焦りが露骨に伝わった。
当事者による発表があっては、スクープはスクープでなくなってしまう。
早くこのネタを世間に出さなければ情報の意味がなくなってしまうのを恐れているのだろう。
「今は須郷がなだめすかしていますが、小野田の我慢が利かなくなるのは時間の問題かと。それまでに記事を出したいですよね?」
「もちろんです。今すぐ写真のデータとスクープの概要を編集部に送ります」
「そこで、ちょっと待ってほしいんです」
「なぜ?」
遠藤が声音を変える。正式に編集部に所属しているわけではない遠藤。
ここで「スクープ投下」を起こし、現在波に乗っている古参の出版社に恩を売っておきたいだろう。
そんな彼にとって私の話は渡りの船のスクープであり、不安定な立場にある彼を引き上げる一条の蜘蛛の糸でもあった。
このニュースを消して手放したくはないだろう。
「決定的瞬間の写真は全く撮れていないわけですよね。それじゃあ世間は信用しないし、もしかしたら須郷が嘘をついている可能性もまだ否定できないんですよ」
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