26、友達になんてなれない

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 東條は、オーバーサイズのジャケットで前を覆って、蒲生が怒ったところでも思い浮かべようとした。  だが、たった今、目の前で聞いた言葉が嬉しすぎて、どうにも鎮めることができない。  「この体は、ずっと東條さんだけのものです」  頭の中で、つい何度も反芻してしまう。  だが、橋に向かう階段を上っていく柳森の背中は逞しく、周囲の観客から笑顔で声をかけられる度、それこそ自分の思い込みだと、東條は思った。  「お前のその体は、もう、世界中の大勢の人たちのものなんだよな」  東條には、それが嬉しくも、少しだけ寂しくもあった。
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