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チーフマネージャーの蒲生清隆(がもう・きよたか)が、ICレコーダーの再生ボタンを押した。
『ご指名ありがとうございまーす。ディアブラザーのトオルでーす』
その声に、東條隼人(とうじょう・はやと)の表情が固まる。
声の主は、初対面にもかかわらず、気安く話を始めた。
『90分コースでいいんだよね。僕を指名してくれたってことは、お兄さん、ネコってことでいいのかな。道具とかひと通り用意してるけど、何か注文ある?』
大きな荷物を床に倒すような音の後で、手早くジッパーを開ける音がする。
その音を、別の男の声が遮った。
『道具は使わなくていいよ。ローション塗って、早く始めて。シャワーも浴びてあるから』
それは、仕事の時とはトーンが異なる、東條の声だった。
一ヶ月ほど前、地方での撮影が終わった日の夜に、東條は地元のゲイ向け風俗店のホームページで、トオルという売り専ボーイを指名した。
トオルはクラブによくいそうな今風のビジュアルで、タチ受けする地味な顔立ちのボーイの顔写真が並ぶ中で、異彩を放っていた。
彼が、特に東條の好みだったというわけではない。ただ、笑顔で映る宣材写真の、目だけが妙に煽情的で、東條の中で燻るモヤモヤとした気持ちを粉々に壊してくれそうな気がした。
東條がバスローブを脱いで全裸でベッドに座ると、トオルは、「じゃあ、このままいっちゃうね」と、一気に服を脱ぎ捨てた。
「本当は、先にシャワー浴びなきゃいけないんだけどさ」
「いいよ、そのままで。ソープの匂いがするチンポなんて、しゃぶる気がしないだろ」
「へえー、お兄さん、フェラ好きなんだ」
そう言いながら、大きめのトランクからローションのボトルを取り出したトオルの下腹部は、既に半勃ちになっていた。
「その方が早いだろ。それにしても、仕事熱心だな。客が咥える前に、元気になってるじゃないか」
東條は苦笑しながらそう言うと、目の前で仁王立ちしているトオルの腰を引き寄せた。血管が浮かび始めたトオルのモノを根元から舐め上げ、先端を舌の先でチロチロと弄ぶ。それだけで、トオルのそれは屹立した。
「お兄さん、上手。じゃあ、ここからは僕が‥‥」と言って、トオルが東條の顔に唇を寄せる。だが東條は、トオルの両肩を押して、体を離した。
「キスはしないで。愛撫は適当でいい。とりあえず、挿れてくれ」
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