6、帰って来たセフレ

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 その日、昼過ぎに起きてきた藤野は、シャワーを浴びると、スーツケースからタグが付いたままの服を取り出し、姿見でスタイリングをチェックした。  「向こうで知り合った若いデザイナーが、俺に似合うからってくれたんだけど、どうかな?」  かつては自分のスタイリングを真似していた後輩が、今は一流のスタッフに囲まれて最新のファッションに身を包んでいる。  「カッコ悪いわけないだろ」  東條は、藤野の姿を見ることもなく言った。  「今日は、そのカッコで、どこに行くわけ?」  つい、聞かなくてもいいことを聞いてしまう。  「事務所に報告。土産渡して、次のスケジュール確認して、その後、スポンサーの付き合い」  「じゃあ、今晩は来ないんだな」  「うーん、しばらく来れそうにないなあ」  「分かった」  ちょうど食べ終わったパスタの皿を片付けながら、東條は素っ気なくそう答えた。  相手が自分だけじゃないことは分かってる。その中で、自分が一番じゃないことも察しがつく。自分だって藤野を利用しているだけのくせに、互いが求める温度差が違い過ぎることを目の当たりにすると、腹が立つ。そんな自分の狭量さに、また苛立つ。  自分勝手だとわかっていても、会えば必ず何かしらのタイミングで、こんな風に自己嫌悪に陥ってしまう。  その度に東條は、藤野はセフレなのだと、自分に言い聞かせていた。  「また、拗ねるし‥‥。昨夜のだけじゃ足りないのは分かるけど、隼人が拒んだんだよ。俺は、ヤル気満々で帰ってきたのにさ」  藤野はキッチンに立つ東條を背後から抱きしめると、耳元で囁いた。  「欲求不満なら、これからヤル?」  藤野の手が、東條のジャージのズボンの上から、尻の割れ目に深く食い込む。  「ああッ‥‥」  東條が、思わず吐息を漏らす。  「ホント、感度いいんだから」  藤野は、東條の耳にフゥーッと息を吹きかけると、もう片方の手を、ジャージの前方に滑り込ませた。  だが、東條は、まだ小さいままのそれを包みこもうとする藤野の手を止めた。  「ダメだよ。これからトレーニングだから」  その言葉に、藤野が、怪訝そうな顔をする。
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