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柳森は、一瞬、首を傾げたが、直ぐに表情を戻した。
「1週間分のレシピを置いていくので、できるだけ自分でつくってください。調味料も、最低限のものは揃えておきました」
「帰ってくると、もう、まともに料理する気にならないんだよなぁ。疲れちゃって」
自然と声が甘えているのが、東條自身にも分かった。
「つくり置きしておくといいですよ。今日の分は、多めにつくって冷蔵庫に入れてありますから、適当に食べてください」
「明日も同じメニューになりそうだな」
「駄目ですよ。バランス良く、いろんなものを食べてください。僕も、出来るだけつくりに来ますから」
「本当?」
声が弾んでしまい、慌てて咳払いで誤魔化す。
「それから、これも、毎日飲んでください」
柳森は、酢を入れたコップに水を注ぎ、東條の前に差し出した。
「お、おう‥‥」
平常心を装って、その水を一気に飲むと、あまりの酸っぱさに顔が歪み、むせ返る。
そのリアクションに、柳森が例のウェルシュ・コーギーの顔で笑った。
「だから、それ、反則だって‥‥」
東條は、咳き込みながら、柳森の顔を盗み見た。
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