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「RYO、ごめん、俺、ダイエットしてるって言ってなかったよな。食事も柳森君が色々考えてくれてさ。冷蔵庫の中の惣菜も彼がつくってくれたんだけど、これが、素人とは思えないほど旨いんだよ。お陰で、肉体改造も順調でさ。だから、今、俺、シチューとかワインとかはちょっと控えてるんだ」
「へええ。だけど、見た感じ、この前来た時と、あんまり変わってない気がするんだけど。隼人、下っ腹とか、結構、贅肉が付きやすいし。‥‥まだ、掴めちゃったりするんじゃないの」
柳森の脇をすり抜けて、東條の前に立つと、藤野はジャージのトップスの裾をめくり、ズボンの中に手を入れようとした。
「凌二!」
東條は、体を捻って、その手を掴んだ。そして、思わず声を張ってしまったことで緊張した空気を和らげるために、弁解を続けた。
「まだ始めたばっかりなんだよ。成果が出ないのは、俺の体質と、これまでの怠惰な生活のせいでさ。このまま柳森君の言う通りにやってれば、必ず痩せるから。‥‥どうする? 俺がバリバリのモデル体型に戻ったら。RYOのライバルになっちゃったりしてさ」
どっちの機嫌を取ろうとしているか分からない東條に、藤野はため息をついた。そして、挑発的な目で柳森を見つめた。
「柳森さん。俺、モデルやってるから、ダイエットには、ちょっと詳しいんですよ。このビーフシチューもね、油を使ってないし、デミグラスソースの代わりにフォンドボー使ってるんです。肉も輸入のヒレ肉だし、ジャガイモやめてブロッコリーにするとかね。とにかく、カロリーを抑えてるんですよ」
不穏な空気に、東條が「RYO‥‥」と、止めに入るが、藤野は聞きもしない。
「隼人は元々太ってないし、肉体改造なんてしたことないから、急に生活を変えると、ストレスが溜まって、撮影前にリバウンド、ってこともあり得ると思うんですよ。だから、少しは彼の好みとか、生活スタイルも考えてもらえませんか」
柳森は無表情で聞いていたが、藤野の話を真っ正直に受け止めたようだった。
「そうですね。すみません。僕、東條さんの好みまで考えていませんでした」
「何なら、俺が隼人の食事の面倒を見ますよ。冷蔵庫に貼ってあるレシピ、あれ、柳森さんが考えたんですよね。基本的にあれ通りにつくって、たまにカロリー制限した好物を入れますけど、それなら構わないでしょ」
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