8、キッチン・プレイ

4/4
前へ
/124ページ
次へ
 藤野はそれを心得ていて、東條を一瞬で快楽の渦に引き摺り込んだり、焦らしたりするのだった。  そうして、東條が抵抗する気力を無くした時、彼のジャージのポケットの中のスマホが振動した。  藤野は右手の指で東條を執拗に攻めながら、左手でスマホをタッチした。  「もしもし、東條さんですか」  さっき聞いたばかりの声が、スマホから流れてくる。ふたりの時間に割り込んできた声に苛立ち、藤野は目を閉じて快感に浸っている東條の口元に近づけた。  濡らしてもいない中指と薬指まで突っ込んで中を掻き回すと、東條の声のボリュームは急上昇する。  「ああああんッ‥‥ダメッ‥‥凌二ッ‥‥乱暴に‥‥するなって‥‥」  「なら、やめる?」  「バカッ‥‥早くッ‥‥挿れろよッ‥‥もう‥‥出ちまうッ‥‥」  「やっぱり、俺のでイキたいんだろ」  「ああ‥‥お前ので‥‥イキたいッ‥‥」  藤野が、自身の怒張したモノで東條の体を貫くと、彼は、「ふぅぅぅぅぅぅん」と、一段と艶っぽい声を上げた。  その声を聞かせると、藤野はスマホを耳に当てた。電話は無音のまま繋がっている。  「聞こえた? ‥‥んっ‥‥今、取り込み中‥‥んっ‥‥用があるなら‥‥んっ‥‥留守電に入れてッ‥‥」  東條の体を突きながら、相手の反応を無視してそれだけ伝えると、藤野は電話を切った。  そして、空いた両手で東條の尻を押さえつけると、逃げ場がないほど激しく腰を打ち付け続けた。その度に、東條が、喘ぎ声とも呻き声とも分からぬ声を出す。  藤野は、ただ腹の底から湧いてくる欲情のままに、腰を動かした。東條の快楽のピークを考える余裕など少しもなかった。
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

115人が本棚に入れています
本棚に追加