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だが、ひとりで行うサーキットトレーニングは、思いの外きつかった。
30秒ごとにストップウォッチをセットし、6つの筋トレを繰り返すのだが、ストップウォッチをセットするわずかな時間に、次のトレーニングをする気力をなくしてしまう。それなら自分でカウントしようと、口に出さずに数を数えるのだが、集中力を欠いた瞬間に、秒数も何周目かも、簡単に頭から飛んでしまうのだった。
また1から始める気にもなれず、適当なところから続けようとするのだが、自分の中に生じた怠け心に気づいてしまうと、その先を続けたところでトレーニングにはならないのではないかという疑心が湧き、それがやる気を失せさせる。
自分の体力以上のトレーニングを続けてこれたのは、柳森が厳しく指導してくれたからだと、東條は、あらためて思い知った。
それなのに、何という暴言を吐いてしまったのだろう。
次の日、別の公園でひとりでトレーニングしながら、東條は、自分から「自主トレ」などと言ってしまったことを、心底後悔していた。
それでも、クランクインまでに、柳森のような引き締まった体をつくり込まなければなければならない。
東條は、僅かなことで生じてしまうネガティブな気持ちを振り払い、以前、蒲生に渡されたスケジュール通りに、トレーニングをこなした。
それでも、東條の肉体に、目に見えた変化は現れなかった。トレーニングから3週間近くが経ち、筋肉は徐々につき始めているような気もするが、思ったほど贅肉が落ちない。
その原因の1つが、栄養管理にあることは想像に難くなかった。
柳森のつくった和食は旨かったが、好物のビーフシチューには勝てず、毎日食べているうちに、冷蔵庫の惣菜を腐らせてしまった。仕方なく、柳森のレシピ通りにつくっても、何故か同じ味にならない。藤野に聞こうにも、彼は柳森と鉢合わせして以来、姿を現さず、連絡してみたら海外にいるという。結局、近所の惣菜屋で同じような料理を買ってくる毎日が続き、つい惣菜の近くに並んでいるおにぎりに手を伸ばしてしまってからというもの、炭水化物を減らせずにいたのだった。
それに加えて、数日前から、脇腹を捻ると痛みが走るようになっていた。医者に行くと、筋肉が炎症を起こしているから暫く動かすなと言う。
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