ある晴れた日の書斎から

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 うす暗い階段をおりると、書斎のドアは大きく開け放されていた。  部屋の南から西に広がる格子窓。外は、真っ青な海と水色の空。  ところどころに開いた窓から、冷たい十一月の風が吹き込んでくる。 「ヨウちゃん、おそうじの手伝いに来たよ~っ!!」  あたしは、塾の手さげカバンをぶんぶんさせて、書斎にとび込んでいった。  書斎の真ん中で、ヨウちゃんがふり返る。  窓の日差しにかがやく、さらっさらの琥珀色の髪。  トレーナーの肩幅は広くって。背中は平たくって。しゃがんでるジーンズの足は、長くって。なんか、すでにおとなの男の人って感じ。  とても、あたしとおんなじ小学六年生とは思えない。  のどぼとけまで、しっかり出ちゃってさ。声がわりまですませてるし。 「お~、(あや)。助かる」  透けるようにキレイな琥珀色の目が、あたしを見て、ふわっと笑った。  あ、ズキューン!  卒業キャンプが終わってから、あたし、この目にめっちゃ弱い。  まっすぐに見られると、すぐにやられちゃう。心臓バックバクで、カ~って、ほっぺたに熱がのぼっちゃって。  う~、マズイ~。  だけど、本人は、あたしの変化に気づいてるんだか。気づいてないんだか。  また、背を向けて、部屋の真ん中にしゃがみこんで。もくもくとゆかに落ちてる本をあつめてる。
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