ある晴れた日の書斎から

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 ヨウちゃんのお父さんはイギリス人。  お母さんは日本人だから、ヨウちゃんはハーフ。  で、ここは、妖精学者だったお父さんが、亡くなるまでつかっていた書斎。  今は、ヨウちゃんが占領してる。  なんだけど。  ゆかの上は、本や、ハーブの葉っぱだらけ。社長ディスクみたいに大きなつくえの上も、つみあげられた本や、ガラスビンでいっぱい。  ノートは開いたまんまだし。横にシャープペンが転がってるし。とにかく部屋の中、やりっぱなし、出しっぱなしで、めちゃくちゃ状態。  ヨウちゃん、意を決して、この土日で、大そうじをすることにしたんだって。  だけど、ひとりじゃ手に負えないから。「土曜日、塾が終わったら手伝って」って、たのまれたんだ。 「にしても、すっごい、よごしたね~」  塾のカバンを壁にたてかけて、あたしもさっそく、落ちてるハーブの葉っぱあつめ。  一ヶ月前。あたしが毎日、この書斎に来ていたころは、ゆかはつるつるで、深いブラウンの木目が広がってた。  ヨウちゃんが掃除しているところは見たことがなかったけど、たぶん、こまめにちょこちょこやってたんだと思う。この人、最低限の整理整頓はする人みたいだから。  でも、ここ数週間はちがってた……。
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