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コンビニで購入した弁当を食べながら、自宅のパソコンで画像を探した。
一枚目のpic。最初の写真のインパクトは重要だ。ユカリーンならどうする。ダイエットを願う女性は、どんな写真でインスタグラムのギャラリーを開くかを考えた。
自宅の部屋で自分の身体を撮影するだろうか。いや、それは唐突だ。所謂、自撮りは、身体に自信を持てるようになってからだ。自分自身をギャラリーに晒すのは、見てくださいというメッセージに他ならない。
ユカリーンは架空の女性だから顔を見せる訳にもいかない。顔のシルエットや目元だけだとイメージになり過ぎ親近感がない。女性が容姿を公開すると、男性のフォロワーが増え、痩身サプリの顧客獲得には結びつかない。軍曹からも叱責されるだろう。
「男を集めてどうする。それとも趣味か」
追い込まれるのは嫌だ。
今年で二十八歳になるが、女性との縁に恵まれてきたタイプではない。女心を理解する素養にも経験にも欠けている。ペットボトルのお茶を飲みながら、若い女性が運営していそうなインスタグラムや、若い女性をターゲットにしたショップのインスタグラムを見続けた。テレビから時折笑い声が響くが、味気ない日常が変わることはない。
同じかもしれない。ふと感じた。少しは日常に変化を求めたい。他者との共感が心地よくありたい。職場や学校や家族や友人や決められたフレームの中で、理不尽なことや不愉快なことがあっても、ギャラリーのネットワークの中で、写真を投稿、掲載したpicに好意を寄せられることは、プラスの刺激を日常に迎える可能性がある。
愛してやまない猫の写真を投稿する。全世界の愛猫家から「可愛い」と認められる。
美しいと思う花の写真をあげる。「どこで撮影したのですか?」と反応がある。
旅好きで空港の写真を見せると、「いってらっしゃい、海外の写真楽しみにしています」と期待が寄せられる。
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