第一章

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あの当時は、ポールの作曲能力はキャリアのなかでピークだったにも関らず、ファンや評論家からのバッシングの嵐だった。 日本のミュージシャンの間でも、踏み絵が出来ていて、ジョン派と宣言すれば、ロック・ミュージシャンとして認められるという状況だった。 名指しすれば、サザンの桑田佳祐とチューリップの財津和夫がそうだ。 今でこそ、ポール派を堂々と名乗っているが、当時は歯切れが悪かった。 生き方がかっこいいのがジョンで、音楽的に尊敬するのはポール。 そんな言い方をしていたと思う。今もそうかも知れない。 ミュージシャンであるなら、ポールが好きなのに決まっている。 【ポール派宣言・その1】 ポールの魅力は、歌に尽きるでしょう。 ジョンのようなパフォーマンスもしないし、だから本にもなりにくい。 かと言って、バート・バカラックのような職人作曲家でもない。 その辺は、本人も分かっていて他人に提供した曲はことのほか少ない。 それに、その時代・時代の流行歌なら、ポールより上手の人はたくさんいる。 ジョンは歌を作り出すけど、ポールは歌が浮かんでくる。 だから、必要に迫られて作った歌は、すべてジョンの歌。 ハードデイズナイト、オールユーニードイズラヴ。 ポールの歌は、いい曲とそうでない曲の落差が激しい。 ロック、フォーク、バラードなんでもこいだけど、 ポールしか書けないのは、やはりクラシカルバラードでしょう。 イエスタデイ、エリナーリグビー、フールオンザヒル。 ソロになってそれらに匹敵する曲がないのは残念です。 反論が聞こえてきそうです。 マイラヴ、タッグオブウオー、ビューティフルナイト、エボニーアンドアイボリー、 ウオームアンドビューティフル、トゥモロウ、ノーモアロンリーナイツ。 名曲は、たくさんあります。 それでも、どこか違うのです。ビートルズの曲と。 66年頃から解散するまでのポールは神がかっていました。 あまりにも多くを望みすぎなのでしょうか。 でも正直に、最初の『マッカートニー』に失望した人はいると思います。 決してポールを批判している訳ではありません。 ただ、ビートルズ時代のポールは、ソロ時代よりワンランク上と言うことです。 80年頃までは、音楽雑誌などでもビートルズ時代とよく比較されていました。 ジョンが脇にいないから曲に緊張感がないとか。
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