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リンちゃんに話をふられて、青森さん、両手の指と指をあわせて、もじもじ。
「『わたしは、中条君のこと好きだから』って、一度、ことわったんだよ? だけどそのうち、いい人だから、つきあってもいいかなって、思うようになって……。あ……わたしも相手のこと、好きなんだな~って。やだ……リンてば、言わせないでよ~」
青森さん、真っ赤なほっぺたで、リンちゃんの背中をパシパシ。りりしい眉毛も、ひそまっちゃって。
わ~っ!! 恋するオトメ~!!
「そうか。青森、よかったな」
ヨウちゃんの腕が、すっと、リンちゃんの腕からはずれて、カウンターに置かれたマグカップをつかんだ。
「まぁ、がんばれよ。人を好きになるって、けっこう痛いから」
湯気の立つブラックコーヒーをふーふーしてから、口にふくんで。
一口飲んで、カップを置くまでの動作を、あたし、思わず見続けた。
あたしだけじゃない。リンちゃんも、青森さんも。
目を丸くして、ヨウちゃんを見つめてる。
急に静かになった外野に、ヨウちゃんが気づいて、顔をあげた。
琥珀色の目が、あたしを見て。リンちゃんや青森さんを見て。まばたき。
「は? ……なんだよ? 一般論だぞ?」
「……うん」
リンちゃんたち、顔を見合わせて、うなずいた。
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