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「……ねぇ、ヨウちゃん。なんか怒ってる?」
ランドセルをカタカタとゆらしながら、あたしは高台へ続く坂道をのぼってく。
「べつに。怒ってねぇよ」
あたしの五メートル先を行く、ヨウちゃんの黒いウインドブレーカーと、片肩にかけたランドセル。
放課後。あたしはヨウちゃんちに寄り道予定。
なのに、五時間目に劇の役が決まってから、ヨウちゃん、目も合わせてくれない。
「……綾。おまえさ。前、誠に告白されたんだったよな」
グレーのランドセルがカタっとゆれて、ヨウちゃんが肩越しにあたしを見た。
「……へ? あ……うん。ことわっちゃったけど……」
なんでそんなこと、今さら言い出すんだろ?
卒業キャンプに行く前の話だよ?
「……あいかわらず、誠と仲いいんだな」
そうかな?
でも、それは誠が「友だち」って言ってくれたから。
「誠ってさ、なんかあたしと感覚が似てて、遊ぶと楽しいんだ」
えへへって笑ったら、「……ふ~ん」ってヨウちゃん、冷めた声。また、手をジーンズの後ろポケットにつっこんで、スタスタ坂をのぼっていく。
なによ。興味ないなら、わざわざ、きく必要ないじゃん。
「……告白なら、あたしだって、ヨウちゃんにしたんだけどな……」
きこえないように、口の中でつぶやいてみる。
しかも二回も。
一度目はギッタギタにフラれちゃって。二度目なんか、スルー。
それでもめげずに、友だち関係を続けてるあたしだって、われながら、誠に負けず、スゴイと思う。
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