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「べつに。めいわくはしてねぇけど」  ぼそっと言われたから、びっくりした。  ヨウちゃんを見たら、リンちゃんの横の、カウンターのイスにランドセルをかけて、腰をおろしてた。 「かあさん、オレにもコーヒー」 「はいはい。綾ちゃんは、何にする? せっかく、カワイイお客さんがたくさんきてくれたんだから、おばさん、おごっちゃうわよ。さ。座って、座って。みんな仲良くね」  ヨウちゃんのお母さんが、ぽっくりエクボをつくって、ほほえんでくれた。  白いレースのエプロンに、ゆるいウエーブのかかったミディアムヘア。  トゲトゲした店内の空気が、お母さんのかわいらしい笑顔でやわらかくなる。 「あ、あの。じゃあ、あたしはココアをください!」  リンちゃんたちから隠れるみたいに、あたしもヨウちゃんの向こうのハイチェアによじのぼった。 「中条くぅん、きいてぇ~!」  ネコがあまえるみたい。リンちゃんの腕が、スルッと動いて、ヨウちゃんの左腕にからみつく。  イヤ~っ! ヨウちゃんにさわんないで~っ!!  さけんじゃいたいけど。さけべない。  だって、そこはさ。あたし、カノジョじゃないもん。ただの、友だち。  って言うか、ストーカーすれすれ……。 「紀伊美(きいみ)ってば、カレシができたんだよ~っ!!  塾でいっしょになった人なんだって~。話したらもりあがっちゃって。で、紀伊美、その人から告白されて。ねっ!」
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