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弓張月
空に光る月を見上げ
彼女はぽつり呟いた
「私、生まれてきてよかったのかな・・・」
その声は僕をも通り越し
近くの影へと向かうから
言葉のしっぽを掴まえて
断言してみた
「生きていてくれてよかったよ」
どこかで期待をしていた僕は
怒りにも似た
ぶっきらぼうな声を彼女に投げた
『会えてよかった』と
彼女から聞きたかった言葉が
都合よく僕の心に落ち
砂のように散らばった
僕を振り向く彼女の瞳が
三日月型に細まって
『ありがと』
唇が微かに動いた気がした
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