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「あはは。そんな事できないくせに。宗司くんがそんな事できないのくらい知ってるよ。…なんか前にもプロポーズされたことあるよねぇ。でも今日はなんにも酔ってないのに。酔っ払って言ってただけじゃないの、あんなの」
「うん、全然酔ってない。酔ってないけど言ってる」
「そっか。…うん、いいよ」
冬真は笑いながら、あっさり頷いた。
できもしないくせに言っている事がわかっていて、それでもこちらの気持ちをただ受け止めた。
だから尚も続ける。
「このままどこかに、一緒に逃げてよ」
「いいよ」
「何もかも全部捨てて、俺と駆け落ちして。俺も全部、捨てて来るから」
「いいよ」
「誰にも見つからない場所で、俺と二人だけでずっと一緒に暮らして」
「いいよ」
「ずっとそうやって、ばかでどうしようもない間宮でいて。俺がちゃんと幸せにするから」
「あはは、何だよそれ。失礼だろ。…でも宗司くんがそうしてほしいって言うんなら、いいよ」
「俺なんてもっとどうしようもないけど、今までみたいにぜんぶ許して、ずっとそばで笑ってて」
「…はは、いいよ」
できもしないことを、できないとわかっていてお互いに繰り返す。何度も。何度でも。できもしないけど、そうできるんだったらどんなにいいだろうと思う事。
「ずっと一緒にいたいんだ」
「いいよ。ずっと一緒にいてあげる。死ぬまでずっと、宗司くんのそばにいてあげる」
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