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勢いのままがばりと宗司の方を向いて、そこでようやく今日初めて相手の顔をまともに見る。こちらを見下ろす形の宗司は、顎のあたりを困ったように指で撫でる。整いすぎて、一瞬冷たくさえ見えるその顔。色素の薄い、何を考えてるのかわからないような瞳。普段からそう表情豊かなタイプでもないが、だからといってこの非常事態において、なぜそんなに落ち着いた様子でいられるのか。
「だって笑うしかないっていうか…そりゃもちろん、なんでもないわけないに決まってるだろ」
「そうかな!?なんかすっごい余裕そうに見えるんだけど!何があったかわかってんの!?」
「いや、こっちはこれでも本当に朝までずっと寝付けなくて」
「なに?もしかしてこんなことしょっちゅうですかね、宗司くんにとっては!」
ふつふつとこみ上げてくるのは恥ずかしさなのか、後悔なのか、怒りなのか。いろいろな感情がごちゃ混ぜになって、苛立ちのまま、混乱と興奮のあまり声が裏返るのも構わずにまくし立てる。一方宗司は疲れ切ったような、困ったような、うんざりした表情でため息をつく。
「こんなことしょっちゅうだったら、とんでもないだろ」
「そうだよとんでもないよ!なんっって事してくれてるんだよっ!なんなんだよ、宗司くんホモだったの!?変態なの?なんで?なんでこんな事してんの?バッカじゃないの!?あんな」
「え、ちょっと待ってよ」
「待てるわけないだろ!なんであんな事したんだよっ」
おろおろし始める相手をキッと睨みつけたまま、じわっと目頭が熱くなる。
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