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1.奇跡のバカは二度転ぶ
重い泥がどろどろと体じゅうにまとわりついているのを無理やり引きはがしながら立ち上がるような、そんな最悪の目覚めだった。頭痛、目眩、耳鳴り。とにかくだるい。
目を開けてから五秒。ぐるぐると回っていた視界が静かに落ち着いた時、ふわふわしていた意識の焦点がようやく合った。白い天井、ダウンライト。これまでに何度も来たことがあって見慣れたようで慣れないここは、自宅ではない。
そして次の瞬間、冬真は思わず叫び出しそうになる。
え?なに?へ?ちょっと待て。待って。なんだ?なんで?そうだ。そうだった。嘘だろ?嘘だろ!?まじかよ。昨夜二人で飲んで、それで。
思わずひゅっと吸い込んだ息。それを吐き出すこともできない。はくはくと金魚のように口だけ開けながら、あまりの現実を前に、冬真はただただ硬直した。ひっくり返った心臓はどくどくと物凄い勢いで体じゅうに血液を送り出し、背中からは嫌な汗が一気に噴き出す。
必死の思いで、そろり、と隣の男を起こさないように、細心の注意を払いながら背を向ける形に寝返りを打った。
まずは昨夜の出来事を整理しよう。
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