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かさついたような、いつもより聞き取りづらい声。恐る恐る首を動かして、顔だけ少し振り返る。セミダブルのベッドに男二人。不自然すぎる至近距離に、知らず知らずのうちに体が逃げて、ほとんど壁に張り付くような体勢になってしまう。
「おはよう。…平気なの」
「えっ!?」
からだ、とまだ眠たげな声で言ったその台詞に、ぼっと音がしそうな勢いで一気に顔が熱くなった。そしてその瞬間初めて、全部現実になってしまった気がした。絶望だ。せめて宗司が忘れているのなら、まだ救われたのに。
「いま何時…?もう昼前か」
震える指先をぐっと握り込んで、はたしてどんなリアクションが正解なのか、必死で考える。
考えるが考えがまとまらない。こんな場面は初めてだ。もっと言えば、そもそも誰かとセックスしたのも初めてだ。それは冬真の一大コンプレックスだったのだが、今はそんな事はどうでもいい。そもそも正解なんてあるわけない。あるわけがないのだ。酔った勢い。安易な展開。男女であれば、だ。相手は男だ。友だちだ。
「間宮よく寝てたよね、あー…喉痛い、飲みすぎた」
むくりと起き上がった宗司が、そのままベッドから降りる。何も身につけない体が露わになって、ぎょっとして咄嗟に目を背けた。
「水、飲む?」
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