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ぬっと突き出されたペットボトルを、目を合わせずに無言のまま、壊れたおもちゃみたいなぎこちない動きでこくこくと頷いて受け取って、体を起こしてそのまま口に含む。無理矢理ひとくちだけ流し込むも、正直吐きそうだ。なのに相手はこちらが飲むのを確かめると、安心したようにわずかに息をついたのを、目の端で見逃さなかった。
ウッドブラインドのわずかな隙間から、鋭いくらい眩しい光が差し込んでいる。きっと外は今日もじりじりと照りつけるような暑さに違いない。けれど空調の効いた室内はしんと冷えて、まるで別世界だ。
宗司がこちらに背中を向けて、脱ぎ捨てた下着にさっと足を通す。ついでに丸めて床に散らかっていたいくつかのティッシュをかき集めると、ゴミ箱へと投げ入れた。あらゆる痕跡の生々しさに、ぐるぐると目が回る。
「つらかったらまだ寝てればいいよ。起きるならシャワー浴び…………ね、間宮もなんかしゃべってよ」
「だだだだだって!!いったい!何を!言えば!いいのか!!!」
「…はは、うん、確かに。そうだよね。ほんとだよ」
はは、って。笑った。笑った!笑ったー!!??
「いやいやいやいや!笑い事じゃないでしょ!?笑えないよ!ぜんっぜん笑えない!!ていうか!なんでそんな何でもないみたいにしてられるの!?」
それは疲れ切ったような乾いた笑いだったのだが、冬真をかっと興奮させるには十分だった。
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