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その恋の結末を、冬真からはやり逃げだと言われた。否定したが、実際のところ結果としてそれは間違いでもない。結局自分は、それまで自分で思っていたほど誠実な人間でもなんでもなかったのだ。結局、その恋で得たのはそんな苦々しい気づきだけだった。
結婚したとか、結婚を考えているという同級生の話は、最近になってちらほら聞くようになった。特に女子は今年いわゆる結婚ラッシュらしく、大学で同じゼミだった女子の結婚式二次会に、この半年で二度出席している。
とはいえ男が結婚するにはまだ少し早いような気がしなくもなかったし、何より結婚している自分というのが、全くもってピンとこなかったのだ。
…が。
あの時素直に年貢を納めていれば、今こんな羽目にはならずに済んだのかもしれない。
「宗司くん、お腹すいたー」
どうしてこう、堂々と悪びれもせず人の金をあてにできるのかがわからない。あてにされるのは別に構わないのだが、ただ理解ができないのだ。宗司はげんなりとため息をついた。
「はいはい、なにが食べたいの」
「えーとね、お好み焼き~」
もうすぐ夕方に差し掛かるという時刻。宗司の部屋のソファでだらだらと転がっていた冬真は、むくりと起き上がったかと思うと、そんな事を言い出した。
「お好み焼きねー」
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