2.さよなら宗司くん

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「…そうだねえ」 その後、無事にたどり着いたその店で、よく焼けた鉄板を挟んで向かい合っている。 冬真の心底幸せそうな声に、生ビール片手に頷いてやる。宗司は座敷の上で行儀悪く片膝を立てながら、そこに自分の顎を載せて、真向かいに座っているどうしようもない男の事を眺めてみた。俺こいつとセックスしてるんだよなぁ。感情は何もなく、ただしみじみとそう思ってみる。 「あはは、間宮歯に青のり付いてる。ばかだよねー」 「……」 「あーあ、ほんと、ばか」 ばかはどっちなんだろう。多分どっちもだ。口もとを手で隠しながら嫌そうに顔をしかめる冬真が可笑しくて、くすくすと笑いだしてしまう。 「…酔ってるねえ、宗司くん」 あきれたような声。 お腹はいっぱいだし、酔いは気持ちよく回っている。この畳の上に、このまま大の字になって寝転んでしまいたい。 まぁいいや。 まぁいいや、もう、なんでも。 投げやりな、でも、とても満たされた気持ちで思った。
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