3.ため息混じりのにらめっこ

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帰り道。すっかり暗くなってしまった夜の道を、納得できない気持ちで歩いている。してやるって言ってるんだから、素直に看病されときゃいいのに。たいしてしてやれる事もないが、いないよりはましだと思うのだけれど。それともいない方がましだろうか。さすがに病人のベッドを奪って占領したりしないのに。 肌寒いと感じるくらいの気温。澄んだ空。今日は星がよく見える。 「…まあ相手は大の男だし、ほっといてもべつにどうって事ないんだろうけど」 自分に言い聞かせるように呟く。 それとも、一晩つきっきりで看病するのもおかしいのかな。…まあ、おかしいよな、ただの友だちだったら。そう思って、しんと心の中が冷えてくる。 実際、ただの友だちの頃だったら、そんな風にしようとは思わなかったかもしれない。でも、この関係が何のつもりかは知らないが、それにしたってただの友だちとはとても言い難い状態なわけだし、少しくらい甘えてもばちは当たらないと思うのだ。それなのに向こうが甘えてくるのはセックスの前後だけだ。 だからって別にセフレ扱いされてるなどとは思っていない。好き好んでこんな可愛げのない、しかも男をわざわざセフレにはしないだろう。だからそういう扱いをされているとは別に微塵も思っていないし、それで卑屈になっているわけでもない。 けれどそれでも、俺たちはそういうのとは違うよと、ぴしりとそこで線を引かれたような気がして、たぶん自分は少しだけ傷ついたのかもしれない。だからって恋人ごっこがしたいわけでは、けっしてないのだけれど。     
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