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4.愛の呪い
あなたが大人になって、彼女ができるまで、こうしてデートしてあげる。
そんな事を言いながら、向かい側の席でアイスコーヒーを飲んでいた母親。どこかの小さなカフェ。窓際の明るい席だった。パフェだったか、ショートケーキだったか、何かそんなものを食べながら、行儀悪くポータブルのゲーム機をぴこぴこやっていた自分は、小学校の低学年くらいだっただろうか。
ひとつのステージをクリアして、みてみて!と、画面を見せると、あ、すごーい、と母親は笑った。
あなたのこと、すごーい、って言ってくれる子、いつか見つけるのよ。
でも、こんにちはがちゃんとできないような子だったら、困るわね。
でも、あなたが選んだ子だったら、どんな子だって、しょうがないわよねぇ。
ほとんど独り言のように母親は言って、ふふ、と微笑んだ。
すごーい、って言ってくれる子。
こんにちはがちゃんとできる子。
その条件くらいは満たしているけれど、それなのに間違いなくこのどうしようもないやつでは、しょうがないわよねぇでは済ませてもらえない。
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