4.愛の呪い

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朝一番からの客先での製品デモが無事に成功して、宗司はほっとしながら社用車に乗り込む。下がりきっていない熱で体が重く頭がぼんやりするが、そうも言っていられない。事務所に戻ったら早速上司へ結果の報告をして、昼を挟んだら午後からは打ち合わせが入っている。今日のこれからの予定についてざっと思考を巡らせる。 「お疲れさん。…瀬名(せな)、お前体調悪い?目真っ赤だし」 「すみません。風邪ひいて、ちょっと熱っぽくて」 エンジンを掛けて、畳んでいたミラーを出し、シフトレバーを引きかけたところで助手席の先輩から問われる。 「熱あんの?大丈夫?何度くらい?」 「8度ちょっととか…そんな感じです」 「運転代わるわ。なんか顔色悪いかなぁとは思ったんだけど。言えよー」 「すみません」 顔をしかめてすぐに立ち上がった相手に合わせて、素直に立ち上がり、席を入れ替わる。 昨夜冬真を帰した後、薬を飲んで一晩ぐっすり眠ったから、これでも少しはましになったのだ。風邪をひいたのがせめて一昨日の土曜だったら、もう一日休めたのにと思う。週明けからこれは、結構つらい。 「腹出して寝てたんだろー」 「…そんなとこです」 「着くまで休んでていいよ」 助手席のシートにずるずると倒れるように、体を凭せ掛ける。それほど気を遣わない先輩とはいえ、普段なら姿勢くらい保つところだが、今日はそれすらもできないくらい、本当に辛かった。 「行きの時も言えばよかったのに。ふらふら運転されたらこっちが怖いわ。こっちはお前と心中してる場合じゃないんだよ」 「…すみません」     
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