4.愛の呪い

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何度目かのその言葉を繰り返す。 走り出した車の中、眠くならない薬を飲んできたはずなのに、うとうと意識を飛ばしかけたところで、声を掛けられた。 「瀬名さあ、結婚とかしないの?」 「…結婚?」 藪から棒な問いに、体勢を立て直しながら目をしばたく。 「いや、考えた事もなかったですが」 「彼女いるとか言ってたじゃん」 「振られました。もう結構前に」 「まあ!それは御愁傷様!」 あからさまに嬉しそうに、にやけた口元に手を当てる相手に、顔をしかめる。 「なんでそんな嬉しそうなんですか…」 「だってお前、なんかいつもこうしゅっとしててムカつくんだもん」 「……。でも、どうしてですか?急に」 「いやー、実は俺、結婚しよっかなぁと思ってて」 えへへ、と照れ臭そうに鼻を掻く相手に、なるほどと頷く。 「おめでとうございます。もう長いんでしたっけ」 「ありがとー。うん、そろそろ付き合って五、六年くらい?そんでまあ、新居っつーの?マンション買おうかなぁとか考えてんだけど」 「へえ、頑張りますね」 だろ、と踏ん反り返ってみせる。が。     
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