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「それとももしかしてまじで転職とか考えてる?こんな会社やめてやるって…ダメだダメだ。ほら、やっぱり今すぐ買え」
「なんなんですか、もう」
そういえばこの間も、父親から譲り受けた車を、買い替えろ買い替えろと散々焚きつけてきたのは、そういう事だったのか。宗司はため息まじりに笑う。
「まあ、頑張ってくださいよ」
「お前、人ごとだと思ってー」
やいのやいのとうるさいマリッジブルーの先輩を尻目に、ぼうっと窓の外に目をやる。ビルの隙間から見える青空は透き通っていて、こんな日にふらふらしながらアリのように働いているなんて、本当にどうかしているんじゃないかと思う。あのキリギリスは今ごろ何やってんだろうな。そう思って、思った事に小さくため息をつく。最近はふとした隙間にあのどうしようもないやつの顔を思い出してしまって、それもなんだか、どうなんだろうなぁと思うのだ。
『…珍しいね、こんな平日の真っ昼間に電話してくるなんて。仕事休んでるんじゃないでしょ?』
呼び出し音が鳴って間も無く、すぐにキリギリスもとい冬真は電話に出た。
「うん、今昼休み。メールくれてただろ。朝返事してる余裕なかったから。心配かけたかなと思って」
『声まだしんどそうだね。 熱下がった?』
「昨夜よりはだいぶましだよ」
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