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ソファに並んで二人してぼんやりテレビを眺めていた時、画面に映るきらびやかなマンションを、冬真が指差した。
「…えー、あれに住みたいって?非正規には無理だろ。まずまともに働いてから言えよ」
芸能人の誰それが住んでいるのだという、やたらと豪華さが前面に押し出されたようなマンションだ。冬真はぶすっとした顔をした。
「宗司くんが買ってくれたらいいじゃん~」
「なんなの、みんなして俺にマンション買え買えって…」
「みんな?」
「こっちの話。…あれいくらすんの?俺には無理だな」
「ええっ、なんで!?宗司くんたんまり稼いでるじゃん。それにこれから先もっとこう、がーん!とうなぎ登りでしょ?」
「しょせんしがないサラリーマンだからね~。どれだけ頑張ったって、天井は知れてるよ。あんなとこ住んでるのって会社の経営者とか、そういう人なんじゃないの」
「嘘!宗司くんの稼ぎでも無理なの?そうなんだー…夢がない。世知辛すぎる。働く気なくなったー」
「ないだろ、端っから」
膝を抱えてぶすくれる冬真がおかしくて、その頭を抱き寄せる。素直に頭を肩に預けてくるので、そこに自分の頭をのせてみる。風呂上がりでまだ湿った髪から、シャンプーのいい香りがした。
「ゆくゆくは長者番付とか、余裕で載るようになるもんだと思ってたよー」
「どんだけだよ」
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