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そんなの無いって一体何が無いのかよくわからないが、黙ったまま話を聞く。
『そうじゃなくて、この木が持ってた言葉は俺の願いなのかもしれないなって思ったんだよ。間宮にそうであってほしいっていう。だからやっぱりこれは持って行くんだ。十字架とかじゃなくても』
穏やかな目をして言っているんだろうな、とあの薄茶色の瞳を思い浮かべながら宗司の声を聞いていた。
「その花言葉って何だったの?」
冬真はそう尋ねたのに、宗司はその問いには答えないまま、穏やかな声のまま言った。
『…間宮、俺、こうして願う事しかできないのかな。間宮に何かしてやれる事はないの?間宮に何かしてやりたい。あげられるものは何でもあげる。してあげられる事は全部してあげる。…でも残したくないんだから、何もあげられないのか』
最後の方はひとりごとのようだったが、宗司のそのせりふに思わず笑ってしまった。
だってその言葉には聞き覚えがあったからだ。
「…あはは、なんか同じような事、いつだったかも言われた事あるような気がする。よっぽどそうしたいんだよね、宗司くんは」
自分の気持ちを示したいのだと、これまでだってあれこれ何かと尽くしてもらってきたような気がするのだけど。
宗司にしてほしい事を考えてみる。
望んでいる事はある。
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