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笑ってそんな事を、冬真はどんな気持ちで言っているんだろう。どんな気持ちで。
些細な事で焼きもちをやいていたような冬真がそんな未来を笑って想像したいはずもない事くらいはわかっていて、それなのにわざわざこうやって口にしているのが強がりなのか、あてつけなのか、それともまた違った感情なのか、よくわからない。感情はひとつではないのかもしれない。
抱きしめたくなる。こんな冬真の事がかわいくて、可哀想で、ごめんと言って抱きしめて、どこにも行かないよって約束してしまいたくなる。お願いだからずっと俺のそばにいてよって跪いて頼み込んでしまいたくなる。
けれどそんな事は言えるわけもないまま、隣に伸ばしたくなる手を我慢するためにハンドルを握り直して、仕方なく笑って答える。
「…あはは。何それ。しかもゆるふわとか。そんな手の掛かりそうな女の人、俺全然タイプじゃないんだけど」
「説得力ゼロだよそれ」
「自分が手が掛かるのを自覚してるって事?」
「そうじゃなくて口うるさくするのが趣味だろ、宗司くんは。突っ込みどころが多い人の方がいいと思うんだよ」
「べつに趣味で口うるさく言ってたわけじゃないけど…その点突っ込みどころ満載だもんな、間宮は」
そうやって冗談混じりに返す。そんな風にしかできない。
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