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お見通しなのだ。冬真には自分の何もかも。
「…なんなんだよそれ。こっちはお前にほとほと手を焼いて、いつだってうんざりしながら言ってるのに、ちゃんとわかってるの?人の話真面目に聞いてるの?そんな事言われて喜んでるなんて、ほんと、どこまでいってもつくづく間宮は」
ばかだよなぁ、と、まんまと言わされてしまって、わざと言ってやって、またしてもため息をついてしまって、今度は自分が笑う。
「ふふ」
冬真も満足げに笑っている。
とっくに気づかれていた。ばかだなぁなんて、そんなのはしょせん愛の告白でしかない。いとおしくてかわいくて堪らない気持ちを乗せてこれまで何度も何度も繰り返してきた、愛の告白でしかない。
「…そろそろ戻らないと駄目か。今日は家に帰してやらないといけないし」
すっかり夕陽が傾いてきている。
そろそろ引き返さなければいけないとそんな事は本当の所さっきからずっと思っていて、でもそうしたくなくて、けれどとうとう声に出してそう言えば、冬真が頷いた。
「そうだね。宗司くんも明日仕事だしね」
どこなのここ、だいぶ走った気がするけど、と冬真は窓に張り付いて外を眺める。
「…今日、間宮に運転してもらえばよかったな」
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