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その通りだ。こうやって言いながら、自分には引き返す事しかできない。
もし冬真に任せたら走り続けてくれないだろうかと考えてみる。
自分を一緒に乗せたまま、やりたいまんま好きなように走ってくれないだろうか。あの時のドライブみたいに。
冬真がどうにかしてくれないものかと、心のどこかでまだ願っている。
いつもの向こう見ずな自由さで気楽に笑って、「なんとでもなるよ」って言って、引きずっていってくれないものかと願っている。
二人で生きていくなんてできないと離れようとしているのは自分で、矛盾しているのも人まかせに身勝手な事を願っているのもわかっていて、それでもまだそんな事が心をよぎるのを自分でもどうしようもなかった。
「…ねぇ間宮、あのさ」
「んー?」
本当にどうしようもないな、と自分で自分に呆れながら、言いたいまま声にした。
「俺と結婚してよ」
前を向いたまま言った。できないとわかっていて言った。冬真が一瞬、きょとんとしたのがわかった。
単なる冗談だ。だってできない。結婚はもちろんだけれど、それに似た事を冬真とする勇気もない。でも冗談ではない。そんな事を言った自分の声には知らないうちに切実さがにじんでいた。真顔になったのが自分でわかる。笑えなくなる。少しも笑えない。
「俺と結婚して」
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