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本当にぜんぶ無くなるんだな、とあらためて実感する。本当に行ってしまうんだな、と。
「…あのね、間宮」
「んー?」
その時、隣に立つ宗司が静かに切り出した。
「明日見送りとかしてくれなくていいからさ」
「うん?」
「だから俺たちね、まだ今日のうちにおしまいにしとこうよ」
やさしい声で宗司は言った。薄茶色の瞳をやわらかく細める。
「だって明日、間宮の誕生日だろ」
「………」
宗司の片方の手は、そっとこちらの頬を撫でてそのままそこに留まる。
「誕生日、祝ってから行った方がいいのか、祝わないうちに行った方がいいのか、悩んだんだけど。だってバースデーケーキの願い事のやり直し、できてないだろ。でももう思い出増やさない方がお互いいいのかなって。…それにさ、土壇場になってまた俺が血迷ったりしたら今度こそ困るだろ。だから明日見送られるより、今日のうちに見送っておく方がいいと思う」
その言葉に冬真は思わず笑ってしまった。
「あはは。僕らがこんなんなっちゃってるのって、まあ血迷い続けた結果だもんねぇ。…うん、そっか、わかった。じゃあ今日この後帰るね」
「うん。…間宮」
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