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覚えておく。どうやって人の体を慈しむのか。
触れる場所も、順番も、強さも、宗司のやり方を全部覚えておく。いつかべつの誰かとそうする時に、きっとなぞるそのやり方を。
腕の中にある体を手のひらで辿りながら、人間の体はぜんぶ曲線なんだなと思う。
歯とか爪とかを除けば、どこもひとつも尖ったりしていない。どこもかしこもなだらかに、やさしくできている。
ぜんぶ宗司が初めて教えた事だ。
自分と宗司とを、ある日突然、何の予感もないまま、ただの友達でいられなくしてしまったこの行為。
でも最後のセックスは、最後なのに、最後までできなかった。
「……もー、宗司くんが泣くから」
「ごめん、俺かっこ悪いね。……はあー…ほんと情けない」
冬真はベッドの上で仰向けの姿勢で宗司の重みを受け止めて、宗司が顔を埋めている首すじが濡れるのを感じながら、その頭を抱きしめている。
「…間宮」
「うん」
「間宮、あのね…」
「なに?」
「………」
「…そんなに泣くくらいなら、全部言っちゃいなよ」
言いながら、背中を押してやるつもりで宗司の髪を撫でる。しばらくそうしているうちに、静まりかえった部屋の中に、まるで言葉をぽとりと落とすように、宗司が呟く。
「…好きだよ」
潤んだ声。
「うん」
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